- 福留良尚
医療職がお金に無頓着な理由
理学療法士を含め、医師、看護師、SWなど、ほとんどの医療に従事する職種が実際に自分の手でお金のやり取りをすることは皆無と言ってもいい。

だからだろうか…?
医療職は、自分の業務に対する対価に無頓着な気がしてならない。
実際、目の前の顧客(ここではビジネスの話なのであえて「顧客」という)が支払うのは、医療費の1から3割。
しかも、高額医療費制度等によって月額の上限が設けられているから、難病指定を受けた人は収入によって差はあるが月5,000円程で受け放題。
半世紀以上前に作られたこの国民皆保険制度は、日本人には無くてはならないものだ。
保険料を納めれば、誰でも、いつでも、どこででも有資格者が提供する医療を受けられる。
…これは、いつまでもつだろう?
知っての通り、医療費の大半は税金で賄われている。
私たちが納めている保険料は、今医療や介護を受けている高齢者や障害者に使われていることは、もちろん知っているだろう。
私たちがおじいちゃんおばあちゃんになった時に使えるものではない。
では、私たちが高齢者になって、医療や介護を受けようとした時、その保険料は誰が支払う税金で賄われるかというと…
私たちの子供や孫世代
その時どれくらいの人口がいるだろうか?
既に人口減少は始まっていて、2050年には日本の総人口は1億人を下回ることが予測されている。
人口構成も変化し、15歳から64歳の生産年齢人口は2017年の7,596万人(総人口に占める割合は60.0%)が2040年には5,978万人(53.9%)と減少することが推計されている。

総務省:人口減少時代のICTによる持続的成長より引用
医療が誰でも、いつでも、どこででも受けられる状況は、変わっていくのではないだろうか?
既に医療保険で受けられるリハビリテーションは、制度の変化と共に受けられる期間が制限されている。
昨年4月、介護保険を利用している方の疾患別リハビリテーションの算定が原則認められなくなった。
要介護・要支援被保険者に対する維持期・生活期の疾患別リハビリテーション料について、介護保険への移行に係る経過措置を1年間に限り延長し、平成 31 年4 月以降、要介護被保険者等に対する疾患別リハビリテーション料の算定を認めない取扱いとする。
医療保険の疾患別リハビリテーションと介護保険の通所リハビリテーションを同時に実施する場合について、施設基準を緩和する。
【参照】厚生労働省 中央社会保険医療協議 2018年2月07日 資料 平成30年度診療報酬改定 個別改定項目(リンク>>>https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf)
20年程前のリハビリには算定日数がなかった。
患者さんはエンドレスに受けることが出来たわけだ。
そこから疾患別のリハビリに分かれ、算定日数という上限ができて現在の制度に移行してきた。
自由にリハビリを受けることは出来ない社会になった。
しかし、世間は「人生100年時代」「健康寿命の延伸を!」と言っている。
私たちの知識、技術は、今後も病気をされた人の限局した時期だけに提供するものであって良いのだろうか?
現状の医療保険、介護保険内でのリハビリ供給についても、既に厚生労働省は「供給数は需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる」と言っている。

厚生労働省:医療従事者の需給に関する検討会 第3回 理学療法士・作業療法士需給分科会資料より
3人に1人の療法士の仕事が必要ではなくなる
この状況で学ばなければならないのは、私は「ビジネス」だと考えている。
医療職であっても、社会のあらゆる場面で貢献することが可能であり、それをするために必要な知識がビジネスだ。
社会の構図を知り、医療業界を外から見ることで初めて自分たちの仕事を理解することも出来るし、医療業界以外から必要とされているものも感じ取ることが出来るようになる。
そんな学びを一緒にやっていける仲間を探したいな~
理学療法士 福留良尚